• 放送・映像システムへのIP技術の適用

 
 
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放送・映像システム、特にプロダクションシステムへのIP技術の適用が本格化してきました。世界最大級の放送機器展であるNABでも、各社がIPを適用したソリューションを展示していました。NAB IP Showcaseでも、IP化の課題に対する解決策が動態展示され、IP技術の適用が着実に進んでいることを実感しました。さて、今回から数回に分けて、プロダクションシステムのIP化のキーとなるマルチキャストネットワーク、アリスタネットワークス製品を利用した構築について紹介していきます。

プロダクションシステムのIP化には、マルチキャストの技術が適用されます。マルチキャストの適用により、これまでプロダクションシステムの主流のメディアであったSDI(Serial Digital Interface)では実現が難しいとされた、映像や音声の信号の共有が可能になります。(SDIでは、映像、音声を必要とするデバイスごとに物理的に配線することにより、映像、音声信号の共有を実現してきました)

マルチキャストネットワークの構成要素

マルチキャストネットワークを構成するには、IPアドレス(ユニキャスト、マルチキャスト)、マルチキャストスイッチングやルーティングといった要素を考える必要があります。マルチキャストのアドレスは、常に送信用のアドレスとして定義されています。映像や音声信号ごとにマルチキャストアドレスを割り当て送信することで、ネットワーク上の受信装置の間で信号の共有が可能になります。マルチキャストアドレスは、ブロードキャストと同じく特別な制御がなければ、フラッディングされます。フラッディングされるということは、送信の不要な装置にも信号が届き、ネットワーク帯域を消費してしまうことになります。これを最適化するためには、ネットワークの構成、その制御を実現するプロトコルの検討も必要になります。プロトコルを利用することで、スイッチやルータは、信号を必要とするノードの所在を把握することが可能になります。

マルチキャストネットワークには、マルチキャスト・スイッチング(Multicast Switching)とマルチキャスト・ルーティング(Multicast Routing)のふたつの考え方があります。

Multicast Switching:マルチキャストのSender (信号の送信ノード)とReceiver (信号の受信ノード)が、同一のネットワーク(Subnet/VLAN)に存在します。IGMPを利用してマルチキャストを制御します。 Multicast Routing:マルチキャストのSenderとReceiverが、異なるVLANに存在します。IGMPに加えてPIMを利用してマルチキャストを制御します。

IGMP:スイッチや同一VLAN上でマルチキャストを必要としているポートを把握し、このポートのみにマルチキャストを送信します。 PIM:複数のVLAN間でマルチキャスト通信を可能にするためのプロトコルです。SenderとReceiver間の通信経路を最適に構築します。

今回は、Multicast Switching(レイヤ2)のネットワーク構築についてみていきます。

マルチキャストネットワークの構築

今回は、vEOS-labを利用して、レイヤ2のマルチキャストネットワークを構築してみます。vEOS-labは、アリスタネットワークスのスイッチ上で動作するオペレーティングシステム(EOS)を仮想環境上で実行、体験するための仮想イメージです。仮想環境上で複数のvEOS-labを実行することで、お手元の環境でも簡単にマルチキャストネットワークを構築することが可能になります。vEOS-labのインストールについては、vEOS and VirtualBoxを参考にしてください。

レイヤ2マルチキャスト構成

5台のvEOS-labを起動します。4台のうち2台ををマルチキャストスイッチ、残り3台をマルチキャスト信号のSenderとその信号を受信するReceiverとして起動します。Senderは、iperfを利用してマルチキャス信号を送信します。Receiverは、mtestを利用してSenderが送信する信号を受信します。以下に構成を示します。192.168.111.1および192.168.111.17からマルチキャスト信号を送信します。この信号に対して192.168.111.16を加えた3台のvEOS-labが、Receiverとなりマルチキャスト信号を受信します。

レイヤ2マルチキャスト動作

マルチキャスト信号の送信元となるSenderは、iperfを利用してマルチキャストデータを送信します。Receiverは、linuxのマルチキャストテストツールのひとつmtestを利用して、マルチキャストグループを要求します。(Senderのiperfで実行したグループにIGMP Joinメッセージを送信します)

Receiverの接続状況をマルチキャストスイッチとして機能するvEOS-labで確認します。アリスタネットワークスのスイッチでは、デフォルト値(初期設定値)でIGMPが有効になっていますので、ReceiverからのIGMP Joinメッセージを受信すると、どのポートにReceiverが接続されているのか認識できます。show ip igmp snooping groupコマンドを実行して確認します。

Ethernet3に239.10.10.100に割り当てされた信号を必要とするReceiverが接続されていることが確認できます。(先ほど、mtestでIGMP Joinメッセージを実行したマルチキャストグループが存在していることが確認できます) ただし、IGMP Querierが存在しないことから、マルチキャストグループがVLAN内にフラッディングされることが警告されています。(Warningメッセージ) それでは、フラッディングを回避するためには、どのように対処すれば良いのでしょうか。

IGMP Snoopingの適用

レイヤ2ネットワークでは、IGMP Snoopingを利用することで、マルチキャストグループに所属するポートのみにトラフィックを送信することが可能になります。IGMPが有効なネットワークでは、IGMP Querierが、ネットワークに対してQueryメッセージを送信します。これを受信したReceiverが、Reportメッセージを送信することで、スイッチは、マルチキャストを送信すべきポートを認識し、管理します。(IGMP Querierの存在しない場合、マルチキャストトラフィックは、すべてのポートにフラッディングされることになります)

それでは、先ほどのネットワークにIGMP Querierを起動して、IGMPの動作を確認してみましょう。192.168.111.252IGMP Querierとして起動します。Querieとなるスイッチにて、ip igmp snooping vlan { VLAN ID } querier, ip igmp snooping querier address { ip address }コマンドを指定してquerierを起動します。

IGMP Querierを起動すると、Querier以外のスイッチ(ここでは、192.168.111.251)がQuerierの存在を認識します。show ip igmp snooping querierコマンドでQuerierの起動を確認できます。ここでは、QuerierではないスイッチでQuerierの状態を確認します。また、Querierが存在するポートをmrouterポート(Multicast Routerが存在するポート)として認識します。

それでは、show ip igmp snooping groupコマンドを実行してreceiverの状態を確認してみます。IGMPグループが認識され、IGMP Querierが不在のときに警告された”フラッディング”の警告が消えていることがわかります。これで、IGMPによってマルチキャストネットワークが最適化されたことになります。

IGMP Querierを設定することにより、スイッチは、マルチキャストグループを認識し、適切なポートのみにマルチキャストトラフィックを送信することが可能になります。

レイヤ2のマルチキャストネットワークの構築で注意が必要なケースがあります。マルチベンダでネットワークを構築するケースでは、IGMP Querierの位置によっては、IGMP Reportメッセージが適切にフォワーディングされないケースがあります。このようなケースでは、IGMP メッセージのオプションをチェックしてください。EOSのデフォルト値では、IGMP オプションにrouter-alertビットがセットされていないとReportメッセージを受信しません。このため、IGMP snoopingのテーブルに当該グループエントリがされないため、マルチキャスト通信ができません。

このようなケースを回避するには、Multicast Routingが有効です。次回は、PIMを利用したMulticast Routingについて紹介し、Multicast Switchingとの比較をします。

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