• 放送・映像システムへのIP技術の適用 (3)

 
 
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放送・映像システムへのIP技術の適用検討が本格化してきました。適用検討の本格化にともない、ユースケースを想定したテストが行われています。こうしたテストは、机上では想定できない隠れた問題を抽出してくれます。これらの問題解決により、IP技術の導入のヒントが蓄積されていきます。今回は、PTPに着目し、隠れた問題を紹介しながら、その解決方法を紹介していきます。

IP技術の適用は、放送・映像システムに大きな変化をもたらします。そのひとつが同期信号(PTP)の配信です。IP技術の適用により、ネットワークを介してスタジオやベニュごとに生成していた同期信号の配信が可能になります。接続する拠点間に距離がある場合には、必然的に各拠点にスイッチを配置して周辺装置を集約します。そしてスイッチ間を接続することになるでしょう。このよう構成で、PTPの配信ができない場合があります。どのような構成でPTP配信に問題が出るのか、具体的に紹介していきます。

ネットワーク構成

リモートプロダクションを行うために、センター拠点とリモート拠点のそれぞれにスイッチを設置すると想定します。これらのスイッチを、レイヤ2スイッチとして動作させます。レイヤ2スイッチですから、センター、リモート拠点には、同一のVLANが延伸されることになります。リモート拠点では、同期信号を取得し難い環境と想定、センターからPTPを配信します。センター拠点のスイッチをPTP Boundaryモードで起動します。リモート拠点のスイッチは、接続装置が多くないため、PTP BMCAには介在しないスイッチです。(非PTPスイッチ) マルチキャストを適切に配信するため、各スイッチは、IGMPが有効です。

問題

このように、PTPスイッチと、非PTPスイッチを多段接続(カスケード接続)する場合、リモート拠点にある周辺装置が、PTPメッセージを受信できないという問題が発生します。リモート拠点の装置は、上位のクロックソースに同期できないので、音声、ビデオの送信・受信ができません。なぜ、センターとリモート拠点は、同一VLANに所属し、マルチキャストを適切に制御するためにIGMPを動作させているのに、PTPが配信できないのでしょうか。

IGMP

この問題の背景には、IGMPが関連していますので、簡単にIGMPを復習しておきます。IGMPは、エンドホストが受信したいグループを伝達するための手段です。スイッチが、IGMP Snoopingを有効にすると、IGMPメッセージの監視が可能になります。スイッチは、どのポートにマルチキャストを送信すれば良いか理解することが可能になります。EOSでは、デフォルトでIGMP Snoopingが有効になっています。

#show ip igmp snooping
Global IGMP Snooping configuration:
-------------------------------------------
IGMP snooping              : Enabled
IGMPv2 immediate leave     : Enabled
Robustness variable        : 2
Report flooding            : Disabled

PTPが受信できない理由

スイッチを含むPTPを実装する装置には、IGMP メッセージを送信しないものがあります。EOSでは、デフォルトでIGMP Snoopingが有効になっています。PTPは、Eventメッセージ、Generalメッセージに224.0.1.129のグループアドレスを利用します。これらのメッセージのみを送信して、PTPの配信を実現しています。(IGMPを利用しない) つまり、周辺装置が、224.0.1.129に対するIGMPメッセージを送信しないと、スイッチは、PTPを必要とするポートを認識できないことになります。PTPメッセージの送受信ができませんので、リモート拠点の周辺装置は、上位のクロックに同期することはできないことになります。

対策

それでは、どのように対処すれば良いのでしょうか。スイッチのIGMPを停止すれば、スイッチは、224.0.1.129を含むマルチキャストをフラッディングします。簡単にこの事象を回避できるでしょう。ただし、マルチキャストがフラッディングされることになってしまいます。これでは、現実的な選択肢にはなりません。 (1) PTP 対応スイッチ導入 (2) Static IGMPの適用 が検討できます。

PTP対応スイッチの導入:リモート拠点にPTPに関与できるスイッチを配置します。このスイッチでPTP boundary モードを有効にします。PTPを有効にしたポートで受信するPTPメッセージは、スイッチのCPUに到達します。これにより、IGMPとは関係なくPTPメッセージングが可能になりますので、この事象を回避できます。

Static IGMPの適用:224.0.1.129を静的にエントリすることも、この事象を回避する選択肢になります。ただし、静的にIGMP Groupをエントリするには、スイッチがレイヤ3で動作している必要があります。つまり、PIMを有効にすることが前提になります。このシナリオでは、センターとリモートのスイッチは、レイヤ2スイッチです。周辺装置を含む大幅な変更が生じます。

interface Vlan 10
  ip address 172.31.10.1/24
  ip igmp static-group 224.0.1.129
  ip pim sparse-mode

 

さまざまなユースケースを想定したテストを重ねることにより、IP技術導入に対するヒントが蓄積され、放送映像システムへのIP技術の適用が加速していくでしょう。このブログシリーズでも、導入のヒントを紹介していきます。

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